北海道大学とシェフィールド大学の共同研究(平成28年度―平成30年度)で、放射性核種である137Csや90Srに関しては、アルカリ刺激材料で固化することで、それらの浸出が遅延可能になり、安全に処分可能であることを明らかにした。

 しかし、ヨウ化物イオンやセレン酸イオン等の陰イオン核種の閉じ込め性能や福島第一原発事故で大量に発生している鉄沈殿物および炭酸塩沈殿物等の廃棄物の固化のための、アルカリ刺激材料の出発原料やその配合条件などを検討することが課題として残っていた。

 そこで本研究のねらいは、放射性廃棄物の中でも鉄沈殿物を検討対象とし、安全な保管と処分を可能とする高い陰イオン核種保持性や流動性のアルカリ刺激材料とそのレシピを探索することとなる。また、実廃棄物の1/10スケール程度のパイロットサイズ試験体の試作と評価を行い、実プラントとして成立する固化体製作装置の概念を提案する。さらには、最新の鉄沈殿物インベントリー情報に基づき、本研究で提案する固化体を浅地ピット処分した際の安全評価を行い、多様な性状や核種組成を有する廃棄物固化に対するAAMのポテンシャルを示すことを目標に、日英協働で以下に示す5つの検討を実施する。

(1) AAMの流動性の向上(主にシェフィールド大学が担当)

(2) 陰イオン核種の保持性能を高めたAAMの設計(主に北大が担当)

(3) 鉄とAAMの相互作用の理解(主にシェフィールド大学が担当)

(4) パイロットサイズ試験体の作製と評価(主にアドバンエンジが担当)

(5) 安全評価による処分システムの提案(主に北大が担当)

 なお、本事業は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」による委託業務として、北海道大学が実施したものであり、成果は報告書として公開されている。

令和二年度の報告書

https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5071491

令和元年度の報告書

https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5069857

前身の事業

https://www.kenkyu.jp/nuclear/field/h28/hairo_kadai.html